〈あらすじ〉
3.11から5年目となるフクシマで、ダイビングのインストラクターである瀬奈舟作は、秘密のグループから思い出の品を探し出すよう依頼を受け、亡き父の友人である松浦文平とともに立ち入り禁止の海に潜って、引き揚げ作業を行っている。ある日、依頼者グループの一人である眞部透子が、グループの約束を破り、ダイバーの瀬名に直接コンタクトを取ってきた。行方不明となっている夫の指輪を探さないでほしいと依頼するため…。
〈感想〉
Survivor's guiltを抱く主人公や被害者の心の動きを、静かに、丁寧に描く。決して決めつけるような表現にせず、ある種、読者の想像力に任せるような筆の運びは、筆者の誠実さによるものか。
〈メモ〉
「荒れた海は怒った神様のようで恐ろしいけれど、嫌いと思ったことはない、好き嫌いではなく、存在しているものだから」(瀬名舟作の妻、満恵)
「子どもだから、互いに成長する時間を共にできる。その時間の積み重ねが、先の長い道行の財産になる」(瀬名舟作)
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