『シュリーマン旅行記 清国・日本』ハインリッヒ・シュリーマン(講談社学術文庫)

〈ハインリッヒ・シュリーマン〉

1822年ドイツ生まれ。若い頃移り住んだロシアで藍の商売を手がけ巨万の富を得る。1864年世界漫遊に旅立ち、翌65年日本に立寄る。1871年世界的なトロイア遺跡の発掘に成功、以後ミケナイなどの発掘を続ける。1890年ナポリにて急死。主著に、Mykenae,Trojaなど。


〈感想〉

1865年6月4日の横浜港からの上陸から7月4日にサンフランシスコ行きの帆船エイボン号に乗船するまでの約1ヶ月に日本で見聞きしたことを綴った紀行文。諸外国を漫遊してきた旅行者の視点で幕末期の日本の風俗が記録されており、現代日本に生まれ育った私からしても知らなかったことが多く、非常に興味深かった。

公衆浴場に通う習慣から男女混浴が容認されていること、売春婦がまっとうな生活手段とみなされていること等は、現代日本とは違う価値観に感じる。

直前で訪問した清国でよほど嫌な気分になったのか、清国がひどく悪く記述されているのに比べ、日本については称賛されている記述が多く、誇らしい気持ちで読める。

大君徳川家茂がたくさんのお伴を連れて東海道を通るのを見学した翌日、三つの死体を発見したとの記述がある(p.98)。百姓が行列の前を横断しようとしたことに端を発した出来事のようだが、ほんの150年前には士族により、人が簡単に切られてしまう世の中であったことを改めて知り、現代日本に生まれた幸運を感じる。

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