『センセイの鞄』川上弘美(新潮文庫)

〈あらすじ〉

37歳の大町月子(ツキコさん)は、近所の居酒屋で高校時代の国語教師松本春綱(センセイ)とたまたま隣り合う。

待合せする訳でなく、カウンターでたまたま居合わせて世間話をするだけの仲の二人が、市やキノコ狩、花見、パチンコ等に出掛ける中で、次第に愛情を育んでいく物語。

2001年谷崎潤一郎賞を本作で受賞。


〈感想〉

凡そ70歳のセンセイと40歳間近のツキコさん。自立しつつも孤独な二人にとって、お互いがなくてはならない存在になっていく恋物語が穏やかに、静かに、切々と描かれている。

最終章では、最晩年の恋ゆえの、センセイの覚悟とツキコさんの喪失感に胸を打たれる。


〈メモ〉

「さらしくじらの最後の一片にしずしずと酢味噌をからめ」p.11

「モーターを動かすほどの力はないが、ほんの少し生きてる」p.20

「恋愛というものが、そんなじゃらじゃらしたものなら、あまりしたくない」p.96

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